食器の歴史〜西洋食器と和食器はどのように生まれたのか〜

日常生活には、必要不可欠な食器たちですが、洋食器と和食器、それぞれがどのように生まれたか、ご存じでしょうか。今回は日本と世界の食器の歴史について簡単に考えてみましょう。

日本に食器と言われるものが登場するはるか昔、中国江西省の洞窟遺跡で土器が発見されました。これが有史に残る初めての器です。日本ではどうでしょうか。縄文土器や弥生土器は日本人ならばよく知っていることでしょう。歴史的には陶磁器の前身にあたりますが、

土器を定義すると、いわゆる素焼きの状態の器のことで、のちの磁器のように化学変化によりガラス化していない粘土が、そのまま残っているもの、ということができます。北海道の大正遺跡群の調査によって、この土器が最初に料理に使われたのは1万4000年前であると推定されていますが、これは確証することはできません。しかし、人類史のかなり早い段階で土器が生まれたことは間違いないようです。

土器はやがて陶磁器に!

歴史をたどっていくと、陶磁器も中国を中心に発達していきました。その成立は、中国最初の王朝の殷と続く周の時代にさかのぼり、これらは原始磁器、原始青磁などとも呼ばれています。この陶磁器は、セラミックの一種で、土を練り固め、焼成したものの総称です。この陶磁器に使われる粘土には、加熱することでアルミニウムやカルシウムなど他の物質と化合して、ガラス化する石英などが含まれています。この粘土を成形し、加熱することで、土の粒子間に溶けたガラスが入り込み、冷めると固体化して陶磁器となるのです。

中国陶磁器の特色は、窯を使用することで高火度焼成を可能とした点にあります。これによって、土器などより硬質のやきものが生産されるようになりました。また、焼成温度や窯内に送る酸素の調節などで、灰陶、黒陶、白陶などの変化に富んだ焼き物となりました。

加えて、ろくろの使用は、より精密で、器壁が薄く均一な焼き物作りを可能としました。

それから2世紀になると「古越磁」と呼ばれる本格的な青磁器が作られています。また、唐時代の「唐三彩」は鉛釉陶器として有名です。そして白磁が登場してきます。

やっぱり中国で食器は発達していった―白磁の登場

6世紀以降は白磁の名品が多く作られるようになりました。この白磁とは、白素地に無色の釉薬をかけた磁器の総称です。ケイ酸とアルミニウムが主成分で、白色粘土の素地に透明釉薬をかけて、高温で焼き上げて作ります。また青白磁は、釉薬が文様の溝にたまって青みを帯び美しい水色に見えるものをいいます。10世紀の宋時代になると、支配者たちが率先して官窯を設置し、最高度の技術を駆使した作品が、次々に生み出されていきました。こうした青白磁は東アフリカにまで輸出されるようになりました。また、13世紀になると、白地に青色のコバルト顔料による絵付けを施した、日本語では「染付」という磁器の生産が開始され、中国からの輸出磁器として外国で人気になりました。

ついに日本に磁器が伝来した!

白磁の製造技術は、朝鮮半島から来た陶工によって日本にもたらされました。17世紀初めに肥前国有田で李参平により白磁の有田焼(伊万里焼)が生み出されたのです。そしてて、19世紀初め、幕末の文化・文政年間には、その白磁や青花は日用品となるまでに普及しました。

磁器の技術は、やがて世界に広まる!

こうして東洋で発達した磁器の技術は西洋の食器文化に多大な影響と恩恵をもたらしていきます。東インド会社を経由してヨーロッパに広がった東洋の食器たちは、やがて、西洋食器の歴史そのものになっていきます。とくに世界の食器の歴史上、重要な位置を占める食器メーカーをご紹介します。

まず、筆頭にあげられるのはマイセンです。ここはヨーロッパで初めて磁器の製造に成功した磁器製作所でもあります。MEISSENと書くこの「国立マイセン磁器製作所」は、名実ともに西洋白磁の頂点に君臨する名窯です。アウグスト2世の王命が下り、錬金術師であるヨハン・フリードリッヒ・ベトガーが白磁の製造に成功した結果、1710年に「王立ザクセン磁器工場」が設立されましたが、これが、のちの「国立マイセン磁器製作所」の始まりとなりました。

次にリモージュが挙げられますが、フランス磁器の本格的なスタートは18世紀中頃のこの「リモージュ王立製陶所」に始まります。このリモージュはフランスで初めて硬質磁器の製造に成功しましたが、19世紀後半には「リモージュ磁器の黄金時代」と呼ばれ、リモージュ磁器はアメリカにも大々的に紹介されました。

そしてアウガルテンです。ここは、18世紀にヨーロッパで2番目に作られた磁器工房ですが、1744年にマリア・テレジアによって皇室直属の工房となり、ハプスブルク家の紋章をマークに使用しています。

ウェッジウッドは英国陶磁器の父ジョサイア・ウェッジウッドにより1759年にイギリスで設立された、今や世界最大級の陶磁器メーカーです。その「ジャスパーウェア」は世界中で大変なブームを引き起こしています。

デンマーク初の硬質磁器を完成させたロイヤルコペンハーゲンもあります。「ロイヤル・コペンハーゲン陶磁器工房」、通称、ロイヤル・コペンハーゲンは、1775年にフランツ・ヘンリック・ミュラーがコペンハーゲンに製陶所を設立したのが始まりです。手描きによるコバルトブルーの絵柄をその特徴としてきましたが、これは日本の「古伊万里染付」の影響を強く受けています。

イタリアではリチャードジノリが初の白磁を完成させていました。このイタリアの総合陶磁器メーカーは、1735年に創業され、マイセンのような豪華で精緻な芸術作品を作りました。1896年に、現在のリチャードジノリとなって以来、イタリア最大の陶磁器メーカーとなっています。「ベッキオホワイト」、「イタリアンフルーツ」、「オリエントエクスプレス」などが有名です。

そして現代へ…

現代に関しては、皆さんも大変お詳しい方がいらっしゃると思いますが、多様性の時代ですから、昔ながらの高級食器を使う方もいますし、何と100円均一の安いけどかわいい「プチプラ」食器を使う方もいます。

いかがでしたか?超スピードで世界の食器の歴史を見てきました。陶器、磁器、半磁器、銀食器などを問わず、生活のシチュエーションに応じて、自分なりのスタイルに合わせた食器を楽しんで行きたいものですね。